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英語学習の4技能の理論と実践

 

英語学習の理論と実践

今日は、英語学習において、暗記・音読が何故必要で、重要なのかについて理論に基づいてお話ししていきたいと思います。

 

はじめに:言語課題における検討事項

 

私の母校であり実際に授業も受けさせていただきました。

関西学院大学の門田修平教授は、シャドーイング・音読の科学Ⅰの発表の中で、以下のような定義をしています。

 

 

言語インプット→学習(知覚・理解・記憶・内在化)システム→言語能力

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検討課題(1) 検討課題(2)

添付資料①:外国語学習・教育の検討課題 (門田、2007)シャドーイング・音読の科学Ⅰより引用

 

“言語インプット”については、藤井セミナーでは、単熟語の暗記・文法構文の暗記・長文の復習を行っています。そのインプットしたものが、“学習システム”というプロセスを経て、どのように“言語能力”へとつながっていくのか、門田先生の理論を引用しながら、説明をしていきたいと思います。

 

記憶の仕組み

まずは、上記の学習の中に含まれる、“記憶”について考えていきましょう!

そのためには、人間の情報処理プロセスへの理解を深めていきましょう。

 

インプット→符号化→貯蔵(記憶)→検索(書きことば、話しことばへのアウトプット)

(記憶のモデル:人はいかに情報を知覚し、記憶するか?より引用)

添付資料②:人間の情報処理プロセス:概要 記憶のモデル:人はいかに情報を知覚し、記憶するか?より引用

英語に限らず言語習得においては、まず単語・熟語・文法が記憶されることにより、書いたり話したりというアウトプットが生じてくるわけです。母語においては、日常生活の中で膨大な時間その言葉に触れることにより、自然に“記憶”されていきますが、外国語、ここでは英語を習得する際にも、この“記憶”の部分から始めなくてはいけないということです。

人の記憶の仕組み

では、記憶の仕組みについてみていきましょう。人の記憶には、感覚記憶、短期記憶、長期記憶があります。

 

感覚記憶:外部からの刺激を与えた時に起こる、最大1~2秒ほどの最も保持期間が短い記憶である。各感覚器官に特有に存在し、瞬間的に保持されるのみで意識されない。

 

短期記憶:感覚記憶 (sensory memory) とは、記憶の二重貯蔵モデルにおいて提唱された記憶区分の一つであり、情報を短時間保持する貯蔵システムである。また短期記憶の情報はリハーサルにより長期記憶に転送されると言われている。

 

長期記憶:記憶の二重貯蔵モデルにおいて提唱された記憶区分の一つであり、大容量の情報を保持する貯蔵システムである。二重貯蔵モデルにおいては、一旦長期記憶に入った情報は消えることはないとされた

ウィキペディアより引用) 

添付資料③:人の記憶システム(門田・玉井、2004)記憶のモデル:人はいかに情報を知覚し、記憶するか?より引用

皆さんが普段単熟語や文法を1週間に決めた範囲を暗記して記憶されているのは、短期記憶であり、重要なステップは、繰り返し行うことにより、暗記した内容を短期記憶→長期記憶へ移行していくことです。

このことを日々の学習に置き換えて説明してみましょう!下記は2年生の秋を想定していますが、部活をやっていたり、進捗度合など状況を踏まえ、各個人に合うように設定します。

1週間で単語300個 熟語200個を暗記(感覚記憶→短期記憶へ)

約7週間で終わる本の全範囲が終わる試算なので、このセットをくり返して行う

21週間(3回転目)位で長期記憶への移行が進み始めると仮定。(短期記憶→長期記憶へ)

 

このため暗記学習において大切なことは、以下3点です。

  • 毎日繰り返し、全範囲をやること(感覚記憶→短期記憶にする目的)
  • 1週間に単語300個、熟語200個など決められたペースを必ず守ること
  • 単語1~2000、熟語1-1500の範囲も何回転も行うこと(長期記憶にする目的)

時々、テストの前日になって単熟語や文法テストの範囲を聞いてくる人がいますが、このような一夜漬け学習法では、繰り返し行っていないので、短期記憶すら定着しないのは当たり前のことです。つまり、暗記ができないのではなく、やり方を変えれば必ずできるようになります。

単熟語や文法の知識が“長期記憶”になって初めて、長文がスラスラ読めるようになったり、リスニングやスピーキングの能力がついてくるので、単熟語や文法を長期記憶としていくことが、非常に重要です。

 

知覚・理解・内在化について

先程の“学習システム”に含まれる、“知覚・理解”について、門田先生の理論を添付しますのでご参照ください。

添付資料④⑤:

Phonological Loop(Kadota and Tamai, 2004) 記憶のモデル:人はいかに情報を知覚し、記憶するかより引用

単語を見てその意味がわかるまでの二重アクセスモデル:改訂版(門田・玉井、2004)シャドーイング・音読の科学Ⅰより引用

 

 

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具体的な学習法

それでは、具体的な学習方法に移っていきましょう!先に提示した “学習システム”を活性化させる学習法として、門田先生は、シャドーイングと音読を提唱しておられます。門田先生が英語教育エッセイ:インプットとアウトプットをいかにつなぐか、で書いておられたことを引用します。

シャドーイングとは、音声インプットにもとづいて、音読は文字インプットに基づいて、それぞれどのような発音が含まれているかを知覚し(これを音声表象(phonetic representation)の形成と呼ぶ)、その後それを声に出す練習である。ともに繰り返し練習することで、話しことばや書きことばの意味の理解に至る前段階の処理を、苦もなくできる(自動化)のようになる。そしてそのことが、声に出して復唱したり、心の中で復唱したりするプロセスを高速なものにし、その結果、英語の語彙・構文などを丸ごと記憶できるようになると主張している(門田、2007)。”

添付資料⑥:シャドーイング・音読の効用:改訂版、シャドーイング・音読の科学Ⅱより引用

 

 

 

 

 

 

音読の重要性

現在、受験生のクラスでは、単熟語テスト、例文テスト、そして白・黒2種類の長文の復習テストと、復習や暗記する量がぐっと増えてきています。そこで、日ごろの授業では生徒の皆さんに、音読(=英語を声に出して読むこと)の重要性を何度も何度もお話ししています。音読も、「お経の様にただ読めば自然に英語ができるようになる」のではなく

  • 「意味を想像しながら音読すること」
  • 「より多くの長文に触れること」
  • 「より多くの同時通訳練習を行うこと」

がとても重要です。何故この3点が重要なのかを、第二言語習得について少し触れながら、ご紹介します。

 

音読のメカニズムとは 関西学院大学 門田修平先生の理論を引用して説明します。

 

音読訓練

音韻符号化(ディーコーディング)の自動化

音韻符号化した言語情報復唱の効率化

約2秒間で視覚入力を音韻符号化(音読)できるスパンの拡大

効率的な語彙、語彙チャンク、文法情報の記憶

第二言語の習得

音読の訓練は第二言語習得にいかに関わっているか ―門田(2007)引用

添付資料⑦:音読の訓練は第二言語習得にいかに関わっているか ―門田(2007)シャドーイング・音読の科学Ⅱより引用

「約2秒間で視覚入力を音韻符号化(音読)できるスパンの拡大」という話が出てきましたが、実際指導をしている中で、英語の偏差値40の学生と偏差値70の学生で、同じ秒数の間に音読できる英文の長さを比較すると、偏差値70の生徒の方が長い英文を読めるといういのは経験上実際に感じることがあります。また、現代文においても、1000文字の文章を偏差値40の学生は3分で、偏差値70の学生は1分で読むという速度の差も見受けられます。

添付資料⑧:音読の訓練は第二言語獲得にいかに関わっているか

音韻的記憶における時間的制約―二谷(1999)シャドーイング・音読の科学Ⅱより引用

 

「意味を想像しながら」「より多くの長文に触れる」ことの重要性

皆さんは、Gavagai(ガヴァガイ)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?この意味を理解するにあたり、以下3つの場面が紹介されて、意味を理解したというお話しがあります。

  • 原始人が荒野を走る様子
  • 男性がホテルの廊下を走っている様子
  • テレビで女性のピック選手が走っている様子

ガヴァガイの意味を考えるとき、①②の場面だけで考えると、「人(原始人、男性)」と「走る」ということが共通の要素としてあるので、意味が2つに絞られます。そこに③の場面が加わることにより、最終的に「走る」という意味に絞られていくわけです。

このお話しを英語の音読にも応用して考えることができます。ガヴァガイの様に初めは、意味のわからない英単語も、授業の長文で出てきたもの、また単熟語、例文を音読し、同じ単語が使われるより多くの場面に自分が意味を想像しながら触れる事により、自分の中で意味が絞られ、「あ、この単語の意味はこれなんや!」と気がつくことで定着していくのです。そのため、音読する時には、「これはどんな意味なんやろう?」ということを想像しながら、また復習として音読をやるとときは、授業で習ったことを想像しながら、音読をすすめることがとても大切です。

 

より多くのアウトプット練習をすることの重要性

さて、意味を想像しながら音読ができるようになってから、さらに大切なことがあります。それは、英語を読む→英語を読みながら実際に声に出して日本語に訳してみるというステップです。英語を読みながら、なーんとなく意味がわかった気がしていても、実際自分の言葉で訳してみるとつまることが多々あります。このつまるという段階では、折角の音読も、また付随する英語の知識も定着しません。音読しながら、実際に日本語に訳してみて「どこがつまるのか?」ということに気がつくこともとても大切ですし、その「つまり」を自分で解決し、「英語の音読→日本語訳」という同時通訳のプロセスがスラスラ進むようになるまで、練習を続けるということが受験で活用できる英語力定着、また向上に必須です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音読まとめ

単熟語の音読、例文の音読、復習での音読、これらが全て別々の話ではなくて、「様々な角度から頻出する英単語や熟語に触れ、その意味を想像することにより理解し、定着する」このプロセスを実現するために、音読は非常に有効なのです。日ごろの一歩一歩地道な学習の積み重ねにより、自分の中で「あ、こういうことなんや!」というブレークスルーが起こるタイミングが必ずきます。そのブレークスルーに行き着くまでの道がとてもとても大切なので、音読の意味を理解し、あらゆる英語学習に取り入れていってください!!また、音読指導は常時行っているので、気軽に相談してくださいね(^▽^)

 

メッセージ

英語の力を養成するために、毎回、「まずは暗記を!そして繰り返し何回転もさせること、そして単熟語・例文・長文の復習は音読すること」をお話ししています。とはいえ、自己流のやりかた、他の人から聞いたり、参考書に書いてあったやり方、等々、皆さんが日々行っている学習方法があると思います。試行錯誤する中で、今のやり方で効果が出てくることもあるかと思いますが、まずは、だまされたと思って、「繰り返しの暗記・音読」を行ってほしいという一心から、今回は暗記や音読の理論についてお伝えしてきました。また今回は、保護者の皆様にも今やっている学習法は有効であるということを再確認して頂くためにも、是非暗記・音読の理論についてご理解を頂ければと思います。暗記の仕組み、方法、また音読についての、理論・やり方について、疑問などありましたらいつでもご相談くださいませ!!!

 

 

参考文献・資料

門田 修平. “記憶のモデル:人はいかに情報を知覚し、記憶するか?” .“シャドーイング・音読の科学Ⅰ”. “シャドーイング・音読の科学Ⅱ”.

 

 

シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学

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英語リーディングの認知メカニズム

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シャドーイング・音読と英語習得の科学

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英語のメンタルレキシコン―語彙の獲得・処理・学習

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